求人広告にお金をかけているのに応募が来ない、という悩みを抱える人事担当者は少なくありません。広告費を増やしても効果が出ず、コストだけがかさんでいく——こうした状況は決して珍しいことではなく、多くの企業が同じ課題に直面しています。今回は、なぜ求人広告だけでは応募が来なくなっているのか、その背景と見直すべき採用マーケティングの基本について整理します。
求人広告に応募が来ないと感じる背景
求人を出せば応募が来る、という時代は終わりつつあります。その背景には、市場側の変化と候補者の行動変化の両方があると考えられます。
売り手市場で候補者が「選ぶ」時代になった
少子高齢化により若手人材の争奪戦が続き、優秀な人材ほど複数の企業から声がかかる状況が生まれています。求職者は求人票を見るだけでなく、比較・吟味しながら企業を選ぶようになっており、企業側も「選ばれる努力」が求められる時代になっています。求人媒体に出しておけば良い人が来るだろう、という構え方をしていると、優秀な人材からの応募が来なくなってしまう可能性があります。
求人媒体側の仕組み変化も影響している
求人広告への応募が減っている理由は、企業側の取り組み方だけではなく、媒体側の仕組み変化が関係しているケースもあります。ある採用支援会社の担当者は、大手求人媒体の一つがある時期に掲載料型の料金体系から利用ごとの課金モデルへ切り替えたところ、支援先企業で応募数が大きく落ち込んだ例があったと述べています。掲載の仕方自体は大きく変えていなくても、料金モデルの変更をきっかけに応募数が目に見えて減ってしまったというケースです。これはあくまで一つの見立てであり、すべての媒体・企業に当てはまるとは限りませんが、媒体の料金体系や仕組みは今後も変わり続ける可能性があるため、特定の媒体だけに依存した採用活動には限界があると考えられます。
「求人広告に出せば来る」という考え方の限界
求人広告への出稿だけに頼る採用活動は、表面的には手軽に見えますが、根本的な課題を解決できないことがあります。応募が来ない、内定を出しても入社につながらないといった悩みは、求人広告の出し方が悪いという表面的な問題ではなく、どんな人に、どんなメッセージを、どんな手段で届けるのかという戦略的な視点が不足していることが原因だと指摘されています。
求職者は求人媒体の情報だけでは会社の魅力を確信できません。どんな人と働くのか、職場の空気感はどうか、社会にどんな価値を生み出している会社なのか——こうした情緒的な情報が伝わらなければ、志望度は上がりにくいのです。
採用マーケティングという視点で見直す
こうした状況を踏まえて注目されているのが、採用活動にマーケティングの手法や視点を取り入れる「採用マーケティング」という考え方です。単に人を集めるだけでなく、自社にマッチした人材と出会うための戦略的なアプローチとして位置づけられています。
TMPフレームワークで整理する
採用マーケティングを進める際の基本的な考え方として、以下の3つの要素で整理するフレームワークが役立ちます。
- ターゲティング:誰にアプローチするのかを明確にする
- メッセージング:ターゲットに何を伝えるかを考える
- プロセッシング:それをどう届けるかを設計する
ターゲティング
「20代・経験3年」のような表面的な条件だけでなく、行動特性や価値観まで掘り下げて定義することがポイントです。自社で活躍している社員に共通する要素を分析することで、自社に合った人材像が見えてきます。
メッセージング
企業が伝えたいことと求職者が知りたいことの交差点を見つけることが重要です。「働きやすい会社です」という抽象的な表現より、具体的な事例や数字を交えたメッセージの方が信頼されやすいとされています。
プロセッシング
どのチャンネルを使い、どのタイミングで情報を出し、応募から入社までの動線をどう設計するかを考える段階です。SNSや求人媒体、オウンドメディアなどを単発の点ではなく、一連の体験として線でつなぐ設計が求められます。
見直しの手がかりとなる施策例
採用マーケティングの手法にはさまざまな選択肢があります。
- リファラル採用(社員紹介)
- SNS採用
- ダイレクトリクルーティング
- オウンドメディア
- 採用動画
リファラル採用
社員からの紹介による採用手法で、企業文化への適応性やスキルのマッチ度が高い人材が集まりやすく、定着率も高い傾向があるとされています。一方で、多様性の確保が難しくなる可能性もあるため、他の手法との併用が望ましいと考えられます。
SNS採用
日常的な投稿や社員の声を通じて共感や関心を引き出し、自然な形で認知を高めていく手法です。単なる求人告知ではなく、コンテンツとして長期的に育てていく視点が求められます。
ダイレクトリクルーティング
企業側から求職者に直接アプローチする手法で、まだ転職活動を始めていない層にも接点を持てる点が特徴です。ターゲティングとメッセージングの精度が求められます。
オウンドメディア
自社で運用する採用サイトやブログなどを通じて、企業の価値観やビジョン、働く人の声を深く伝えることができます。求職者が興味を持ったタイミングでいつでもアクセスできる点が強みです。
採用動画
テキストでは伝えきれない社風や雰囲気を伝えられる手法です。採用動画を制作・運用支援している事業者が公開している事例では、次のような結果が紹介されていました。
- スカウトメールの返信率が0.93%から1.43%に高まった例(人材サービス業の企業の事例)
- 内定承諾率が30%から50%に増加した例(システム開発会社の事例)
- エントリー率が約1.5倍になった例(電気機器メーカーの事例)
- 応募から入社率が190%改善した例、一次面接の実施率が56%から76%に改善した例(同事業者が公開している事例)
いずれも動画の制作・運用を支援している事業者が自社サイトや動画で紹介している実例であり、業種や運用方法によって結果は異なります。参考情報として捉え、自社に当てはめて考えることが大切です。
内製・プロ伴走・フル代行という選択肢
採用マーケティングを進める方法は一つではありません。自社の担当者がSNS運用や動画制作を内製で行う方法、自社で撮影や発信を行いながら専門家の伴走支援を受ける方法、企画から運用まで外部に委託するフル代行など、企業のリソースや状況に応じて選択肢はさまざまです。どの方法が唯一の正解というわけではなく、自社の体制や目的に合わせて無理のない形から始めることが大切です。
まとめ
- 求人広告に応募が来ない背景には、売り手市場化による候補者の行動変化や、媒体側の料金モデルなどの仕組み変化が関係している可能性があります
- 求人広告への出稿だけに頼るのではなく、誰に・何を・どう届けるかを整理する採用マーケティングの視点が重要です
- ターゲティング・メッセージング・プロセッシングの3要素を整理しながら、内製・伴走・代行など自社に合った方法で小さく始めることが現実的な一歩になります
採用活動の見直しは、まず現状の課題を整理することから始まります。まずはお気軽に無料相談からご相談ください。
