求人広告を出しても応募が集まらない、知名度がないから仕方ないと感じている採用担当者の方は多いのではないでしょうか。実はここ数年、知名度に頼らず人が集まる会社づくりの考え方として「採用ブランディング」が注目されています。この記事では、採用ブランディングとはそもそも何か、なぜ今の中小企業に必要なのか、何から始めればいいのかを、実際の取材や書籍化された知見をもとに整理します。
採用ブランディングとはそもそも何か
採用ブランディングという言葉を日本で最初に体系化した専門家によると、その本質は「市場に合わせること」ではなく「自社の強みで戦うこと」にあるといいます。市場のニーズや採用の流行に自社を合わせていくのは、本来のブランディングではなく施策の組み合わせに過ぎない、という指摘です。
採用ブランディングは、求人広告の出し方やSNSの使い方といった「手法」よりも先に、自社にしかない強みを見つけ、それに合う人に向けてメッセージを発信するという「順番」を大事にする考え方だといえます。
知名度がない会社ほど採用に苦戦する理由
この専門家は、中小企業や無名のB2B企業が採用に苦戦する背景として、大手企業が新卒・中途ともに採用人数を増やし続けていることを挙げています。大手が内定を出す数が年々増えることで、求職者はそもそも中小企業を「探す」段階にすら至らなくなり、以前はエントリーが来ていた会社でも応募自体が来なくなるという構造的な変化が起きているといいます。
この流れの中で、従来の採用手法を少し改善するだけでは効果が薄いという見方も示されています。大手企業であれば今の方法でもまだ採用できる一方、中小企業や無名企業は同じやり方にしがみついていると採用できないスパイラルから抜け出せない、という指摘です。裏を返せば、いい会社であっても求職者の選択肢に入っていないだけで苦戦しているケースが多いということでもあります。
採用ブランディングの出発点は「強み」を掘り出すこと
採用ブランディングを始める第一歩は、自社の強みを掘り出すことだと専門家は説明します。強みは自社が「当たり前」だと思っていることの中にあることが多く、社内の人間ほど気づきにくいという難しさがあります。この強みを見つけた上で、どんな人に向けて伝えるかを考え、初めてメッセージや発信方法の話に進むという順序が重要だとされています。
SNS施策の「成功事例の真似」だけでは採用ブランディングにならない
SNSやTikTokでの発信を検討する企業は増えていますが、他社の成功事例をそのまま真似ることについては注意が必要だという指摘があります。ある企業の役員が踊る動画がバズったという話をそのまま真似ても、バズるかどうか、応募が来るかどうか、応募者とマッチするかどうか、採用できても定着するかどうかは、いずれも不確実だという整理です。自社にとっての必然性がない発信は再現性がなく、たまたま一度うまくいったとしても継続的な成果にはつながりにくいとされています。
これからの採用に必要な「スタイルマッチ」という視点
100社以上の採用支援に携わってきた、ある採用支援会社の知見では、企業と働く人のマッチングの「軸」は時代とともに移り変わってきたと整理されています。かつては強いビジネスモデルや業界で会社を選ぶ「事業マッチ」、次に社風や働き方といった会社の雰囲気で選ぶ「カルチャーマッチ」が主流でした。そして今は、個人やチーム単位の価値観で選ぶ「スタイルマッチ」の時代に入りつつあるといいます。
分かりにくいのが「カルチャー」と「スタイル」の違いですが、両者は”粒度”が異なります。カルチャーは、会社全体をきれいにまとめた最大公約数的な雰囲気で、いわば表層的なもの。理念やパーパスを掲げるのはこのレベルです。一方でスタイルは、もっと細かく、現場の日常に表れる実際の価値観・行動様式・性格を指します。「掲げている理念」と「実際に日々やっていること」の間にある本音の部分まで言語化して、はじめてスタイルにたどり着く、という整理です。
背景にあるのは、働き方やキャリアの多様化です。たとえばZ世代の若者が、自分の性格タイプ(MBTIなど)をプロフィールに書いて「自分はこういうタイプ」と当たり前に発信するようになりました。それと同じように、企業の側も自社の価値観や性格を具体的に表現できるようにすることが、これからの採用では重要になる——という考え方です。
このスタイルマッチの視点から見えてくる、企業がはまりやすい落とし穴として、以下の7つが挙げられています。
- スペック依存症(年収やリモート可否など条件面だけで訴求する)
- 一部の社員だけが前に出る採用広報
- 求職者に刺さらない「良いことを言ってる風」の表現
- すごすぎて求職者にピンとこない魅力発信
- 一人よがりで差が伝わらない発信
- 優秀人材という幻想
- 昭和平成型の採用コミュニケーション
スペック依存症
年収やフルリモートといった条件だけで訴求する採用活動は、入口としては機能する一方、マッチングの決め手が条件面に依存しすぎるとミスマッチが起きやすいとされています。この採用支援会社の知見では、条件面の訴求と自社独自のスタイルの訴求を組み合わせている企業では、指名検索から自社サイトに来た応募者がエントリーにつながるケースが増えているといいます。
一部の社員だけが前に出る採用広報
採用広報でエース社員や経営者だけが前に出る状態では、営業とエンジニアなど職種によって異なる社内の雰囲気が伝わりません。カルチャーは共通していても、職種ごとのスタイルは異なるため、できるだけ多くの社員に接点を持ってもらうことが必要だという指摘です。
良いことを言ってる風の表現・すごすぎる魅力発信
「社会貢献しています」「成長できます」といった言葉は嘘ではないものの、それだけでは求職者に何がどう良いのかが伝わりにくいとされています。「人がいい」と伝えるなら、それを裏付ける具体的なエピソードを添え、名詞(成長・貢献など)だけでなく動詞(どう体現しているか)に落とし込むことが重要だという整理です。ハイパフォーマーや経営者の理想像ばかりを並べると、求職者が自分ごととして捉えにくくなる点も指摘されています。
一人よがりで差が伝わらない発信・優秀人材という幻想
企業が発信したいことだけを発信するのではなく、求職者が知りたい情報を届ける視点への転換が重要だとされています。また「優秀な人材が欲しい」という言葉で採用ターゲットの検討を止めてしまうと、実際にはどんな人物像なのかが言語化されないまま採用活動が進んでしまうといいます。
昭和平成型の採用コミュニケーション
ナビサイトや合同説明会といった従来型の手法だけに依存せず、求職者が実際に情報収集しているメディアに合わせた発信形式を選ぶ必要があるという指摘です。この採用支援会社が学生向けに継続して実施している独自調査によると、就活で情報収集に使うSNSは数年連続でX(旧Twitter)が最も多いという結果が出ているといいます。フォローやレコメンドで自然に情報が入ってくるほか、職種や働き方に関する検索、就活情報を発信するアカウントやキャリアが注目される人物の日常を見て働き方のイメージを掴む、という3つの情報の得方があるとされています。
会社の建前情報だけでは伝わらない時代に
同じ採用支援会社の知見では、会社案内やパンフレットに書かれるような建前の情報を「A面」、社員同士の日常の関係性や働き方のリアルを「B面」と呼び、これからの採用ではB面の情報発信が重要になるとされています。AIによる情報収集が広がるほど、A面の情報は誰でも早く正確に得られるようになる一方、B面の情報はAIでは拾いにくいため、企業側がどれだけ言語化して発信できるかが差になっていくという見方です。
具体的な手法としては、社員同士の対談を入室シーンから収録し、「おつかれさまです」「おつかれっす」といった呼び方や言葉遣いの違いから関係性の近さを見せる、といった事例も紹介されています。また、特別なハイライトのある1日ではなく、何もない普段どおりの1日に密着した内容の方が反応がよかったという取材事例も挙げられており、飾らない日常の発信が求職者に受け止められやすい可能性を示しています。
採用ブランディングを進める3つの選択肢
自社の強みやスタイルを言語化し、発信していく方法には、以下のような選択肢があります。
- 社内メンバーで内製する
- 自社での撮影・発信をプロが伴走支援する
- 企画から運用までをフルで代行してもらう
どの方法が適しているかは、社内にコンテンツ作成のリソースがあるか、発信の継続性を保てるかによって変わります。丸投げの代行だけが正解というわけではなく、まずは自社の強みを掘り出す作業に社内でどこまで向き合えるかを見極めた上で、外部の力をどこまで借りるかを検討するのが現実的な進め方だといえるでしょう。
まとめ
- 採用ブランディングとは、市場に合わせるのではなく自社の強みで戦うという考え方であり、知名度がない会社でも採用の可能性を広げられる方法です。
- SNSなどの施策を単に他社から真似るだけでは再現性がなく、まず自社にしかない強みを掘り出すことが出発点になります。
- これからの採用では、会社の建前的な情報(A面)だけでなく、社員の日常や関係性といったリアルな情報(B面)をどれだけ言語化して発信できるかが問われています。
自社の強みや働く人の日常をどう言語化し、どう発信していくかに迷っている方は、まずはお気軽に無料相談からご相談ください。
