採用にかかるお金が年々重くなっている——多くの採用担当者が感じている実感ではないでしょうか。求人広告を出しても応募は減り、単価は上がり、それでも掲載をやめるわけにはいきません。この構造から抜け出すために、広告費を積み増すのではなく「自社で発信する資産」を持つことで採用コストを削減した企業の実例が、採用支援の現場から報告されています。本記事では、実例の数字と、その数字をどこまで信じてよいのか、そしてコスト削減につながる条件を整理します。
採用コストが上がり続けている構造
人事出身の採用SNS支援者の解説によると、求人媒体の掲載費は月10万〜50万円ほど上がり、応募単価も8000円〜3万円ほど上昇しており、さらに選考辞退率も増えているといいます。また、SNS支援会社の対談では、業界によっては1人採用するのに100万〜150万円かかるという採用単価の水準も語られており、「広告費をかけているのに採用できない」という状況が広がっています。
求人広告の難しさは、掲載期間が終われば情報が消えてしまう点にあります。採用のたびに広告枠を買い直す必要があり、費用は積み上がる一方で、手元には何も残りません。
発想の転換:広告の「買い足し」から発信の「資産化」へ
ここで重要なのは、求人媒体をやめてSNSに乗り換える、という話ではないことです。採用支援の現場で成果が報告されているのは、媒体とSNSの「併用設計」です。
- SNSのショート動画などで、自社を知らない層に認知をつくる
- 求人媒体で、求人情報に接触してもらう
- 応募前に、SNSで会社のリアルを「裏取り」してもらい、安心して応募してもらう
採用SNS支援会社の解説によると、企業をSNSで検索する就活生は55.2%にのぼるとされ、また就職活動をしている人の2人に1人以上がInstagram上で社名検索をするという指摘もあります。ここで情報が何も出てこなければ、不安から離脱されてしまいます。逆にリアルな情報があれば、応募や選考への歩留まりが上がります。これが、SNSが「ミドルファネル」(応募〜選考の中間段階)に効くといわれる理由です。
実例:SNS併用で採用広告費はどれくらい下がったのか
採用SNS支援会社が公開している事例では、媒体単独の運用からSNS併用に切り替えたことで、製造業のA社は月25万円、飲食業のB社は月18万円、IT系のC社は月35万円、医療系の会社は月22万円、それぞれ採用広告費を削減できたと報告されています。ただしこれらはいずれも支援する側の自己申告であり、比較対象とした期間や算出方法は公開されていません。数字の桁感をつかむ参考として見るのが妥当でしょう。
より長期の実例もあります。実際の取材では、鍼灸院・接骨院を全国に数十店舗規模で展開するある会社が、約3年間で400本を超える動画を発信し続けた結果について、役員が、採用単価は半分ぐらいになったのではないか、離職も今は半分ぐらいだと思う、と話しています。
同社では人材紹介・合同説明会・ナビ媒体という従来の構成にSNSが3分の1ほどの割合で加わり、その分のコストを削減できたとされています。動画を見て会社を理解したうえで応募が来るためミスマッチが減り、面接や見学の対応にかかる人的コストも下がった、社員紹介(リファラル)も3年目には40件ほどになった、といった副次効果も語られています。
ただし同じ役員が「いろんな要素があるので、これが一番効いたとは分からない」と留保している点は、公平に見ておくべきでしょう。
削減額の数字を読むときの注意点
ここで見落としてはいけないのが、これらの削減額はいずれも「求人広告費」についてのものであり、SNS運用にかかる費用や社内工数は差し引かれていないという点です。撮影・編集・投稿を外部に委託すればその費用が発生しますし、内製するなら社員の稼働が必要になります。広告費が月18万円浮いたとしても、運用にそれ以上かかれば総額は下がりません。自社で判断する際は、削減額から運用コストを引いた「差し引きいくらか」で見る必要があります。
もう1つ、これらの成果が「バズ」によるものではない点も押さえておきたいところです。支援会社の説明では、横型動画は平均300〜1000再生程度でも、届けたいターゲットに見てもらえる設計になっていれば応募につながるとされています。再生回数を競うのではなく、狙った相手に届いているかどうかが成果を分けます。
採用コスト削減につながる3つの条件
コスト削減に成功した事例に共通する条件として、次の3つが挙げられています。
- 人物が映るショート動画を中心にする
- 求人媒体との接続を設計する
- 継続できる体制をつくる
人物が映るショート動画を中心にする
テキストの投稿だけでは記憶に残りにくく、顔と声が見える動画のほうが「あの会社だ」というブランドの記憶につながるとされています。求人票を見たときに思い出してもらえるかどうかが、応募率の差になります。
求人媒体との接続を設計する
SNSと媒体を別々に運用するのではなく、「SNSで認知→媒体で応募→SNSで裏取り」という導線を最初から設計しておくことが重要です。よくある失敗として、バズ狙いに走る、投稿が単発で終わる、媒体と分断されたまま運用する、といったパターンが挙げられています。
継続できる体制をつくる
効果が出るまでの期間は、支援会社の説明では半年〜1年ほど見てほしいとされています。短期で判断せず続けるための体制——撮影に協力できる社員や、投稿を担当する人の確保——が前提条件になります。
始める前のチェックリストと「向かない会社」
支援会社が挙げている立ち上げ前の確認項目は、次のような内容です。
- 採用ターゲットが言語化されているか
- 現在の媒体掲載費・応募単価・選考辞退率を数値で把握しているか
- 撮影に協力できる社員が2〜3名以上いるか
- 月8本以上の投稿を担当できる人がいるか
- 媒体掲載との接続が運用に組み込まれているか
特に2つ目は重要です。現状の数字を把握していなければ、削減できたかどうかの検証もできません。
一方で、向かない会社もあると明言されています。もともと採用単価が低く、そこに投資するより他に回したほうがよい場合や、来月にも人が必要という急募の場合は、効果が出るまでに時間のかかるSNSは適しません。また、運用のやり方も、自社で完結する内製、自社撮影にプロの伴走を組み合わせる形、制作から任せる代行まで幅があります。どれか1つが正解ということはなく、体制と予算に合わせて選ぶことが大切です。
まとめ
採用コスト削減の実例と条件を整理しました。
- 削減の本質は広告からの乗り換えではなく、資産として残る発信と媒体の併用で求人広告費を下げること。ただし削減額から運用コストを引いた差し引きで判断する
- 公開されている削減額の多くは支援する側の自己申告。桁感の参考にとどめ、自社の数字で検証する
- 成果を分けるのはバズではなく、ターゲットに届く設計と、腰を据えて続けられる体制
自社の場合はどこから手を付けるべきか、現状の採用単価の棚卸しから整理することもできます。まずはお気軽に無料相談からご相談ください。
