人手不足が続く中、採用業務の一部または全部を外部に任せる「採用代行」を検討する中小企業が増えています。ただし「代行」という言葉には、どこまで任せてよいのか分からない、というモヤモヤがついて回ります。母集団形成だけを任せるのか、面接や内定連絡まで任せるのか、入社後の研修まで含めるのか。任せすぎれば「知らない誰かに自社の顔を決められる」不安が残り、抱え込みすぎれば専門性と工数の壁にぶつかります。本記事では、採用代行にどこまで任せてよいのか、自社に残すべき工程はどこかという線引きの考え方を整理します。
採用代行とは何を代行するサービスなのか
採用代行は、英語ではRPO(Recruitment Process Outsourcing)と呼ばれ、採用活動の一部または全部を外部の専門チームに委託する仕組みを指します。「採用」とひとくくりにされがちですが、実際の業務は次のように細かく分解できます。
- 採用ニーズの整理(どんな人材が必要かを定義する)
- 求人原稿の作成と掲載媒体・SNSの運用設計
- 応募者対応と面接日程の調整
- 面接の実施
- 合否の連絡
- 入社手続き
- 入社後の研修・配属
採用代行を検討するときに大事なのは、「採用」という言葉を漠然と外に出すか出さないかで考えるのではなく、この工程ごとに「任せてよいか」「自社でやるべきか」を分けて考えることです。
求人媒体を買うだけでは応募は増えない
これまで多くの中小企業は、求人媒体の営業担当から「2週間掲載でいくら」「1ヶ月でいくら」といったチケット制のプランを案内され、掲載料を払って求人を出すという形を取ってきました。しかしこの方法は、看板を貸してもらっているだけで、その看板にどんな情報を載せ、どれくらいの頻度で発信し、どれだけの人に届いているかまでは媒体側の責任範囲ではありません。応募が来るかどうかは基本的に企業側の情報発信の質にかかっており、媒体にお金を払うこと自体が応募増加を保証するものではない、という点は押さえておく必要があります。
情報を届ける媒体そのものは無料で使えるものも増えており、重要なのは掲載する情報の中身と発信頻度、そしてどれだけの人に届いているかを把握できているかどうかです。ただし、その発信の質を継続的に担保しようとすると、専任の担当者を社内に置くか、外部の専門チームに委託するかのどちらかの投資が必要になります。ここが、採用代行を検討する最初の分岐点です。
採用代行に任せてよい工程と、自社に残すべき工程
採用の各工程を外注する/しないで整理すると、次のようになります。
| 任せやすい工程 | 自社に残したい工程 |
|---|---|
| 求人ニーズの言語化サポート | 最終的な採用要件の決定 |
| 求人原稿の作成 | 面接(合否の判断) |
| 求人媒体・SNSの運用 | 内定条件の最終提示 |
| 応募者対応・日程調整 | 入社後の配属・育成方針の決定 |
なぜ面接だけは自社に残すべきなのか
採用代行の各工程の中で、多くの企業が譲らないポイントが「面接」です。面接は、実際にどんな人が自社に入ってくるかを決める場面であり、ここを完全に外部任せにしてしまうと、いざ入社してから「こんな人だとは思わなかった」というミスマッチが起きかねません。逆に言えば、面接という意思決定のポイントさえ自社でしっかり押さえておけば、そこに至るまでの母集団形成や情報発信、日程調整といった業務は外部の専門チームに任せても、大きなリスクにはならないという考え方が成り立ちます。
営業代行と同じ構造で考えると分かりやすい
採用代行の任せ方は、営業のアウトソースと同じ構造で考えると理解しやすくなります。営業代行でも、アポイントの獲得や初回商談までを外部に任せ、契約内容を決めて実際の取引が始まる最終段階は自社で行う、という分担が一般的です。採用代行も同様に、求職者との接点をつくり、興味を持ってもらうまでの「入り口」の部分を任せ、実際に一緒に働く人を選ぶ「意思決定」の部分は自社で行う、という整理をすれば迷いにくくなります。
任せられる範囲はポジションによって変わる
採用代行にどこまで任せてよいかは、募集するポジションの性質によっても変わります。
- 採用人数が多く、条件も比較的定型的なポジション(現場職など)
- 発生頻度が低いが重要度の高い基幹ポジション(管理職・専門職など)
定型的・大量採用のポジションは外注効果が出やすい
同じ職種を継続的に採用しているポジションは、伝えるべき情報や条件がある程度固まっているため、その情報をいかに分かりやすく、かつ求職者に届く形で発信するかという「伝え方」の勝負になります。ここは情報発信のノウハウを持つ外部チームに任せることで効果が出やすい領域です。
稀少・基幹ポジションは伴走型の関与が必要になる
一方で、数年に一度しか採用しないような基幹ポジションは、決まった情報を分かりやすく伝えるだけでは不十分です。どのような条件で募集し、どこにどれだけ投資すれば必要な人材が採れるのか、給与水準の設計まで含めて一緒に考える、伴走型の関与が求められます。単純な情報発信の代行と、経営に近い採用戦略の相談は別物であり、任せる相手にどちらの機能を求めるかを事前に整理しておくことが重要です。
費用対効果の視点も欠かせない
人材紹介サービスを利用する場合、成功報酬型で採用が決まった際にまとまった手数料が発生する仕組みが一般的です。仮に高い費用をかけて採用できたとしても、早期に離職してしまえば投資した費用の効果はほとんど残りません。採用代行やその他の外部リソースを使う際も、「採れるかどうか」だけでなく「定着するかどうか」まで含めて費用対効果を見る視点が必要です。
外注すると「採用基盤」は自社に残りにくい
費用対効果を見るときに、もう一つ確かめておきたい観点があります。お金を払い終わったあと、自社に何が残るのかという点です。
採用代行を使えば、応募が集まる状態そのものは短い期間でつくれます。ただし、その応募を生んでいる仕組み——求職者に届く発信の型、積み上がった投稿、自社を知っている人の数——は、委託先の側に蓄積されます。契約が終われば、その状態も一緒に離れていきます。費用をかけて採用できたのに、翌年また同じところから始めることになるのは、この構造が理由です。
一方、自社のSNSアカウントを育てながら採用する進め方は、成果が出るまでに時間がかかる代わりに、積み上げたものが自社に残ります。過去の投稿は求職者がいつでも見返せる会社案内になり、フォロワーは次に募集をかけるときに最初から届く相手になります。面接の場で「投稿を見ていました」と言われる状態は、出稿を止めた翌月に消えるものではありません。この蓄積が、次の採用を軽くする採用基盤になっていきます。
どちらかが正しいという話ではありません。今すぐ人が必要なら採用代行のほうが速く、数年かけて採用の足腰をつくりたいなら自社アカウントを育てるほうが残ります。現実的なのは、目の前の欠員は代行で埋めながら、並行して自社の発信を少しずつ積んでいく組み合わせです。外注する工程を決めるときは、誰がやるかだけでなく、終わったあとに何が自社に残るのかも合わせて見ておくと判断を誤りにくくなります。
採用代行の範囲は今後どこまで広がるのか
採用代行は、母集団形成や情報発信の代行にとどまらず、入社後の育成方針の相談、配属先の検討、給与体系や就業規則の設計まで、人事機能全体を代行する方向に広がっていく可能性があります。経理やIT運用と同じように、採用や人事の業務は多くの会社に共通する課題であり、専門チームに任せることで自社に人を抱えるのと同等以上のパフォーマンスを、近いコストで得られるケースがあります。一方で、自社製品の開発のように、その会社にしかできない業務は外に出しようがありません。採用代行にどこまで任せるかを考えるときは、「自社にしかできないことか、多くの会社に共通する業務か」という軸で切り分けるのも一つの方法です。
まとめ
- 採用は一つの塊ではなく、ニーズ整理・原稿作成・媒体運用・応募対応・面接・合否連絡・入社手続き・研修という複数の工程に分解できます。任せる/残すはこの工程単位で判断します
- 面接など「誰を採用するかの意思決定」に関わる工程は自社に残し、そこに至るまでの情報発信や事務対応は外部の専門チームに任せる、という線引きが基本になります
- 任せてよい範囲はポジションの性質(定型・大量採用か、稀少・基幹採用か)によっても変わり、今後は採用代行の範囲自体が人事機能全体へ広がっていく可能性があります
- 外注では採用基盤そのものが社外に積み上がるため、自社のSNSアカウントを育てて採用基盤を自社に残す進め方も、選択肢の一つとして並べて検討する価値があります
自社の採用体制のどこを残し、どこを任せるべきか迷ったときは、工程ごとに一度棚卸ししてみることから始めてみてください。まずはお気軽に無料相談からご相談ください。
