事業が伸び悩んでいる会社の相談を聞いていくと、最後には「採用」の話に行き着くことが少なくありません。戦略やマーケティングの問題だと思っていたことも、たどっていくとその戦略を実行できる人材がいない、という入り口の問題だったりするのです。
今回は、なぜ採用が経営課題の根幹なのか、そして社長自身がどこまで採用に関わるべきなのかを整理します。
採用は「守りの業務」ではなく経営の土台
会社を運営していくには、マーケティング・営業・カスタマーサクセスなど、各ポジションに必要な人を、事業として無理のない条件で採用できていることが前提になります。どれだけ優れた戦略を描いても、それを実行する人材を適切な条件で採用できていなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。
「マーケティングがうまくいかない」「営業が伸びない」という相談も、突き詰めれば「その業務を遂行できる人材を、どういう条件で、どの媒体で、どう募集すべきかが設計されていない」という採用の問題に行き着くケースが少なくありません。
マーケティングや営業の不振に見える問題も、実はその前段にある採用の設計不足が原因になっているケースがあり、事業のどこかで足踏みを感じたら、まず自社の採用の仕組みを見直す価値があります。
なぜ採用は後回しにされやすいのか
経営者は売上に直結する営業やマーケティングに時間を使いたがる傾向があります。採用はその裏側にある「守り」の業務として扱われ、どうしても手が回りにくくなるのです。
その背景には、採用という業務特有の性質があります。
- 売上や応募数のように結果がすぐ数字で見えにくい
- 「今は何とか人が足りていて回っている」状態だと優先度が下がる
- 採用した人材が本当に活躍するかどうかは、入社後しばらく経たないと分からない
手応えが見えにくいから、投資判断が後回しになる
応募数が増えたという結果は分かりやすい一方で、「どれくらい活躍しそうな人が採れているか」という質の部分は数字にしにくいものです。
この「数字化しにくさ」が、採用への投資判断を後回しにする一因になっています。売上のように明確な結果が見える業務に経営リソースが集まりやすいのは自然なことですが、採用への投資を怠ると、後になって営業やマーケティングの成果そのものが伸び悩む、という形で跳ね返ってきます。
採用の失敗は決算書に出てこない「見えない赤字」
一人の離職には、採用にかけたコスト、教育にかけた人件費、そして再び採用し直すためのコストが積み重なります。これらは決して小さな金額ではありません。
ところが、この損失は決算書の上では「採用の失敗による損失」という形では現れません。人件費や採用媒体費として処理されてしまうため、経営者自身がその損失の大きさを実感しにくい構造になっています。
決算書に赤字として表示されないからこそ、採用のミスマッチは放置されやすい、見えない赤字になるという特徴があり、数字として突き上げてこないからこそ、経営者自身が意識的に向き合う必要がある領域だと言えます。
カルチャーフィットが、その後のすべてを左右する
採用の入り口でその会社のカルチャーや価値観に合う人を見極められているかどうかは、入社後のマネジメント、教育、そして離職率のすべてに影響します。
- マネジメントの負荷が変わる
- 教育の吸収スピードが変わる
- 離職や社内の摩擦の起きやすさが変わる
マネジメントの負荷が大きく変わる
会社のカルチャーや価値観に合う人材を採用できていれば、細かく管理しなくても自然と正しい方向で動いてくれる傾向があります。逆に合わない人を採用してしまうと、どれだけマネジメントに力を入れても活躍につながりにくい、というケースが多く見られます。採用した段階で、その後の活躍のかなりの部分が決まっているとも言えるのです。
教育の吸収スピードが変わる
教育とは、採用時点から活躍する状態までの能力の差分を埋める作業です。カルチャーに合わない人材だと、同じマニュアルや研修を渡しても吸収のスピードが落ちる傾向があります。逆に合う人材であれば、短期間で立ち上がってくれるケースが多くなります。
離職や社内の摩擦が起きにくくなる
カルチャーに合わない人を採用してしまうと、その人をフォローする負担や、辞めてしまった後の再採用の負担が発生します。入り口でどういう人を採用するかを決めることが、こうした問題の多くを未然に防ぐことにつながります。
社長自身がどこまで採用に関わるべきか
ここまでの話を踏まえると、採用の最終判断、特に最終面接には、社長自身が関わるべきだという考え方に行き着きます。
人を組織に入れるということは、その組織の土台そのものを形づくる行為です。カルチャーや価値観の言語化、そしてそれに本当に合っているかどうかの最終判断は、人事担当者だけに任せきりにせず、社長自身が見極める場面を持つことが望ましいといえます。
中小企業は資本力の面で大手企業に採用で勝つことは難しいものです。ただ、本気度や熱量という軸では、中小企業にも勝負できる余地があります。社長自身が候補者と直接向き合い、自社で活躍してほしい理由を自分の言葉で伝えられることは、組織の規模が小さいからこそできる強みです。
面接の場では、自社の魅力や条件だけを話すのではなく、候補者がその会社で働くことで得られるキャリアやメリットを、候補者側の視点で語ることも欠かせません。
社長自身が最終面接に関わり、候補者の視点で会社の価値を語れるかどうかが、採用の成否を大きく左右するポイントです。人事担当者に任せきりにしていた結果、カルチャーフィットの見極めがうまくいかなかった、という反省から、最終判断に自分が関わる体制へ切り替える経営者もいます。
明日からできること
採用を経営課題として扱うために、まず取り組めることは次の3つです。
- 自社が今後どんな会社になっていきたいかを整理する
- その方向性の中で、どんな人材が活躍するのかを言語化する
- 社長自身が最終面接に関わり、候補者視点で会社の価値を伝える
会社の方向性を整理する
どんな事業に伸ばしていきたいか、どんな組織にしていきたいかを、まず経営者自身の中で整理します。この方向性が定まっていないと、採用すべき人材像もぶれてしまいます。
活躍する人材像を言語化する
現在活躍している社員に、なぜこの会社で働き続けているのか、何がよいと感じているのかをヒアリングすることも有効です。すでに社内にいる「合っている人」の共通点を洗い出すことで、採用基準の言語化がしやすくなります。
社長自身が最終面接に関わる
候補者にとって魅力的な条件や、入社後に得られるキャリアを、候補者の立場で語れるように準備しておきます。社長自身がこの場に立つことで、中小企業ならではの熱量を伝えることができます。
まとめ
採用は「人事担当者の仕事」ではなく、経営そのものの土台になる業務です。ポイントを整理すると次の3つになります。
- 事業の伸び悩みの多くは、採用の設計不足に行き着く
- 採用のミスマッチは決算書に見えない赤字として積み重なる
- 社長自身が最終面接に関わることが、中小企業の採用力を左右する
採用を後回しにせず、経営課題の一つとして向き合うことが、事業成長の土台になります。まずはお気軽に無料相談からご相談ください。
