「求人を出しても応募が来ない」「来てもミスマッチばかり」——中小製造業の採用担当者から、こうした声を耳にすることが増えました。人手不足だから仕方がない、と片づけてしまう前に考えたいことがあります。製造業の採用が難しいのは、仕事の中身が嫌われているからではなく、「イメージ」と「認知」という2つの壁が応募の手前に立ちはだかっているからです。本記事では、採用支援の現場や企業への取材で語られている内容をもとに、製造業の採用が難しい構造と、中小企業が取り組める打ち手を整理します。
「メーカーは人気、製造業は不人気」というイメージのギャップ
意外に思われるかもしれませんが、ものづくりの仕事そのものは、就活生から嫌われているわけではありません。人材サービス会社との対談で紹介された2027年卒の就活生向けアンケートでは、メーカーが23.1%で1位だったとされています(対談中に画面で示されたデータで、話者自身も出典を断定してはいません)。業種としての評価はむしろ高い水準にあるわけです。
一方で、「製造業」という言葉で聞かれるとネガティブなイメージを持たれることが多いと、新卒採用支援の担当者は指摘しています。工場・肉体労働といったイメージが先行し、「ブラックな働き方なのではないか」「決められたものを作るだけで、自分で作り上げた実感が持ちにくいのではないか」という先入観を持たれやすいというのです。小さい頃からパソコンやスマートフォンが身近にあった世代にとって、製造業の現場は自分が働く姿を想像しにくい場所に見えてしまいます。
実際には現場の環境は大きく変わってきており、明るい職場でチームとして大きなものを作り上げていくことに魅力を感じている若手も現場にはいます。製造業の現場を取材してきた立場からは、その実態を知るきっかけが求職者の側にないことが「一番大きい」と語られています。イメージと実態のギャップが埋まらないまま、選択肢から外されてしまうのです。
製造業の採用が難しいもう1つの理由は「そもそも知られていない」
イメージの壁と並ぶのが、認知の壁です。特にB2B(企業向け取引)の製造業は、就活生にそもそも社名を知られておらず、親世代にも馴染みがないところからのスタートになると指摘されています。まず会社を知ってもらい、そのうえで事業を理解してもらって暗いイメージを払拭していく——この順番が、製造業が就活生から志望してもらうためのキーになるという見方です。
この状態で求人票だけを出しても、大量の求人情報の中に埋もれてしまいます。文字情報だけでは会社の雰囲気や働く人の魅力が伝わりにくく、掲載しても「そもそも見てもらえていない」のが実情だという声は、中小製造業の現場から多く聞かれます。また、大手就職情報サイトは、現場の実感として1人採用するのに100万円を超えるコスト感になるという声もあり、負担の大きい選択肢です。
つまり「応募が来ない」の手前には「見られていない」「知られていない」という段階があり、ここを飛ばして採用手法だけを変えても効果が出にくいのです。
求職者は「誰と働くか」と「リアル」で会社を選んでいる
では、知ってもらえたとして、求職者は何を見て会社を選ぶのでしょうか。
新卒採用支援の担当者によると、いまの学生はSNS・動画・ホームページから自分で積極的に情報収集しており、入社先を決める際には、仕事内容・事業内容と並んで「社員の人柄」が上位の判断材料になっているといいます。社員インタビューや1日密着のような動画を自発的に見に行き、「こういうキャリアが歩めそうだ」というイメージを重ねて、自分に合うかどうかを判断しているというのです。
採用サイトの文字情報だけでは、この「人柄」や「リアル」は伝わりません。一緒に働く人や職場の雰囲気を重視する世代に対して、それを見せられる手段を持っているかどうかが応募の分かれ目になります。
製造業採用の打ち手1:動画で現場のリアルを見せる
イメージの壁に対して有効性が語られているのが、動画による発信です。中小製造業向けの解説では、その理由として次の5つが挙げられています。
- 自社の空気感や現場の様子をリアルに伝えられる
- テキストでは伝わりにくい人の魅力が出せる
- 求職者が検索して見つけやすい仕組みがある
- 一度作った動画が資産として残り続ける
- 他社との差別化につながり印象に残りやすい
自社の空気感や現場の様子をリアルに伝えられる
実際の職場や社員の顔を見てもらえるため、求職者は入社後の自分の姿をイメージしながら応募を検討できます。環境が分かることで心理的なハードルが下がり、ミスマッチの少ない応募につながるとされています。
テキストでは伝わりにくい人の魅力が出せる
採用で最も大切なのは「誰と働くか」だという指摘があります。求人票で人柄を伝えるのは難しい一方、動画なら人の温かみや信頼感が自然と伝わり、志望度の高い応募を増やせるという考え方です。
求職者が検索して見つけやすい仕組みがある
動画プラットフォームは検索の入口としても使われており、仕事探しの際に活用する若い世代もいます。「製造業」「工場」「求人」といった言葉で検索すれば企業の採用動画が並ぶ状況があり、検索から継続的に人材にリーチできる点が強みとされています。
一度作った動画が資産として残り続ける
求人広告は掲載期間が終われば消えてしまいますが、動画は一度作ればずっと残ります。採用のたびに広告費をかけ続けなくても応募者を集められる点が、コスト面での違いになります。
他社との差別化につながり印象に残りやすい
中小製造業で採用動画を積極的に活用している会社はまだ少数派で、だからこそ動画があるだけで差別化になり、記憶に残りやすいという指摘です。
ただし、やみくもに現場を映すだけでは効果が出にくいともされています。よくある失敗として、ただ現場を映しただけ・音声が聞き取りづらい・内容が薄いといった「適当に撮影された感」が挙げられています。裏を返せば、撮り始める前に「誰に何を伝えるか」を明確にしておくことが大切です。誰に来てほしいのかをはっきりさせてメッセージを設計し、社員インタビューなど「人」が見えるコンテンツを入れること。この2点は、始める前に押さえておきたい設計のポイントです。
作り方には幅があります。採用動画に求められるのはかっこよさよりもリアルさや誠実さであり、スマートフォンと無料の編集ソフトからでも始められるとされています。もちろん、企画や編集だけプロに任せる形や制作から委託する形もあり、自社が続けられるかどうかを基準に選ぶのが現実的です。
製造業採用の打ち手2:「見つけてもらう仕掛け」とセットで設計する
動画やSNSで発信を始めても、B2B企業の場合は「そもそも自社を探しに来てもらえない」という認知の壁が残ります。そこで語られているのが、発信と「見つけてもらう仕掛け」を組み合わせる考え方です。
新卒採用では、企業側から学生にアプローチするスカウト型サービスの利用が広がっています。人材サービス会社の担当者によると、スカウトの送信数は2024年卒から2026年卒にかけて260%ほど伸びているといいます。スカウトを受け取った学生が動画やSNSでその会社を調べてから選考に進む、という行動を起こす人も多いとのことです。
つまり、スカウトなどの仕掛けで「認知」をつくり、動画・SNSの発信で「理解」を深めてもらう。この両輪を組み合わせることが、知られていない会社が応募を集めるうえで大切だとされています。
もう1つ大切なのは、採用を人事だけの仕事にしないことです。求職者に事業を理解してもらう段階で一番熱く語れるのは、現場・事業側の人間だとされています。事業部側も発信に関わり、会社全体で採用に取り組む体制づくりが重要になるという見方です。
まとめ
製造業の採用が難しい理由と、中小企業の打ち手を整理しました。
- ものづくり自体の人気は低くない。「製造業」という言葉のイメージと実態のギャップ、そして「そもそも知られていない」という認知の壁が、応募の手前を塞いでいる
- 求職者は仕事内容に加えて「社員の人柄」や職場のリアルを見て会社を選んでおり、それを伝えられるのは文字より動画・SNS
- 発信だけでは届かない。スカウトなど「見つけてもらう仕掛け」と組み合わせ、人事と事業部が一体となって取り組む
自社の魅力をどう見せるか、どこから始めるかは会社の状況によって変わります。まずはお気軽に無料相談からご相談ください。
