せっかく採用できたのに、入社してすぐに辞めてしまった——多くの採用担当者が一度は経験する悩みではないでしょうか。早期離職の防止というと、募集の工夫や面接の見極めに目が向きがちですが、実際に定着を大きく左右するのは、内定承諾から入社後1か月の「受け入れ体制」です。この記事では、早期離職を防ぐために押さえておきたい受け入れ体制のつくり方を解説します。
早期離職は「入社後」だけの問題ではない
早期離職というと、入社後の教育やフォロー不足が原因だと捉えられがちです。しかし実際には、その芽は入社前の情報格差からすでに生まれているケースが少なくありません。募集や面接の段階で会社の実態が十分に伝わっていないと、入社後に「思っていた仕事や社風と違う」というギャップが生まれ、それが早期離職の引き金になります。受け入れ体制を考えるときは、入社日をスタートラインにするのではなく、応募段階からの情報の一致を土台に据える必要があります。
入社前の情報格差をなくすことが定着の土台になる
全国に多店舗を展開するある企業では、採用活動でSNSによる発信を継続してきた結果、入社してくる人の多くが「動画で見ていた社風に憧れて」応募してくるようになったといいます。あらかじめ働く現場の雰囲気や社員の様子を知った上で入社してくるため、入社後に認識のズレが起きにくく、離職も少なく、社員のエンゲージメントが高い状態からスタートできる傾向があるとのことです。
また別のある企業でも、応募から面接までの間に候補者へ会社の動画を見てもらう運用を取り入れたところ、ほとんどの応募者が「動画を見た上で」面接に臨むようになりました。実際の業務内容や現場での関わり方を映像であらかじめ理解してもらうことで、面接時の志望度が上がったり、入社後のギャップが小さくなったりする効果を感じているといいます。動画に出演していたスタッフが実際の配属先の上司だったことが、新入社員の安心感につながったという声も聞かれます。
こうした事例はあくまで個社の実感であり、万能な数値として一般化できるものではありませんが、共通しているのは、入社前にどれだけ実態を伝えられているかが、その後の定着に直結するという点です。受け入れ体制の第一歩は、入社日ではなく募集・選考の段階からすでに始まっています。
見学・面接の段階で「無理に合わせない」を徹底する
母集団が小さいと、採用担当者はどうしても目の前の候補者を逃したくなくなり、無理に自社へ合わせた話し方をしてしまいがちです。しかし、その場しのぎで入社まで持っていっても、現場に出てから「話が違った」というミスマッチが起こりやすくなります。
先に紹介した多店舗展開の企業では、SNSでの発信によって認知を広げ、母集団そのものを大きくすることで、無理に合わせず自社に合う人だけを見極められる状態をつくっているといいます。見学や面接の時点で社風に合わないと感じた候補者には、無理に選考を進めずグループ内の別の店舗を紹介するといった対応も取っているとのことです。母集団を広げてから絞り込む余裕があるからこそ、無理に合わせずに済むという考え方です。入社後のミスマッチと、それに伴う早期離職のリスクもそこで下がります。
早期離職を防ぐ受け入れ体制、押さえておきたいポイント
入社初日からの1か月で定着を決めるために、受け入れ体制として押さえておきたいポイントは次の5つです。
- 入社前に伝えた情報と現場の実態を一致させる
- 初日のスケジュールと役割をあらかじめ明確にする
- 早い段階で1on1・フォロー面談の機会を設ける
- 現場に橋渡しをしてくれる「頼れる人」を配置する
- 会社の考えを伝え続ける発信を、入社後も止めない
入社前に伝えた情報と現場の実態を一致させる
募集時に見せていた社風や仕事内容と、実際に配属された現場の雰囲気が食い違っていると、新入社員は早い段階で違和感を覚えます。採用広報で伝えていた内容を、受け入れ側の現場でも共有し、初日から矛盾のない状態をつくることが大切です。
初日のスケジュールと役割をあらかじめ明確にする
「誰に何を聞けばいいか分からない」「今日何をすればいいか分からない」という状態は、新入社員の不安を大きくします。初日から数日間のスケジュールと、誰が何をサポートするのかをあらかじめ決めておくだけでも、受け入れる側の負担と新入社員の不安の両方を減らせます。
早い段階で1on1・フォロー面談の機会を設ける
入社直後は、小さな疑問や不安を一人で抱え込みやすい時期です。配属先の上司やチームとは別に、定期的に話を聞く機会を設けておくと、違和感が大きくなる前に拾い上げることができます。
現場に橋渡しをしてくれる「頼れる人」を配置する
先ほどの企業の例のように、採用の段階で接点のあった人物が、入社後も身近な存在としてサポートに関わることは、新入社員の安心感につながります。誰か一人でも「この人がいれば大丈夫」と思える相手がいる状態をつくることが、受け入れ体制の要になります。
会社の考えを伝え続ける発信を、入社後も止めない
多店舗展開の企業の例では、拠点数が増える中でも、社長や役員の考えが現場に伝わっている実感があるといいます。採用のための発信を、入社後も社内向けのメッセージとして継続することで、新入社員だけでなく既存社員も含めた組織全体のエンゲージメントを底上げできる可能性があります。
受け入れ体制づくりは、会社の体制に合わせて選べる
受け入れ体制の土台となる情報発信や社内コミュニケーションのつくり方には、決まった正解があるわけではありません。自社の社員が撮影や更新を担う内製、自社で撮影しながら専門家の伴走を受ける形、企画から運用までを任せるフル代行など、会社の体制やリソースに応じて選べる選択肢があります。どの方法であっても、大切なのは「入社前に伝えた姿」と「入社後に体験する現場」を一致させ、それを継続して発信し続けることです。
まとめ
- 早期離職の芽は入社後ではなく、募集・選考段階の情報格差から生まれやすい
- 初日のスケジュールや役割の明確化、早期の1on1、頼れる人の配置など、受け入れ体制は具体的な仕組みとして設計できる
- 採用のための発信は入社後も続けることで、新入社員の定着だけでなく社内全体のエンゲージメント向上にもつながる可能性がある
早期離職を防ぐ受け入れ体制づくりは、募集の段階から入社後まで一貫して設計することで効果を発揮します。自社の状況に合った進め方を一緒に整理したい方は、まずはお気軽に無料相談からご相談ください。
