Z世代の採用がうまくいかない、応募が集まらない、内定を出しても他社に流れてしまう。地方や中小企業の採用担当者からは、こうした声がよく聞かれます。背景には、Z世代特有の価値観や情報収集の仕方と、これまでの採用の仕組みとの間にあるギャップがあります。本記事では、採用支援に携わる関係者への取材内容をもとに、Z世代の価値観の特徴と、地方・中小企業が押さえておきたい接点のつくり方を整理します。
Z世代の価値観にはどんな特徴があるのか
求人広告業界で長く企業の採用支援に携わってきた担当者への取材では、Z世代の価値観の特徴として、次の3点が挙げられていました。
- お金や条件よりも「どんな人と働くか」「どんな働き方か」「どんな成長・やりがいがあるか」を重視する傾向がある
- 会社の雰囲気やカルチャーが自分に合っているかどうかへの関心が高い
- 終身雇用を前提とせず、一つの会社に長く勤め続けることを当然とは考えていない傾向がある
お金より「誰と・どう働くか」を重視する
取材に応じた担当者によると、上の世代では「稼ぐこと」への意識が強かったのに対し、Z世代ではその比率が下がっているといいます。代わりに重視されるのが、一緒に働く人やチームの雰囲気、そこで得られる成長です。給与条件だけを訴求点にしても、響きにくくなっているという指摘です。
カルチャーとのフィット感を重視する
Z世代はソーシャルメディアで情報を得ることが当たり前という前提で育っている世代です。企業側の情報発信が不十分だと、入社前後でイメージのギャップが生まれやすくなります。会社の雰囲気や社風を、事前にどれだけ伝えられているかが問われます。
終身雇用を前提にしていない
選択肢の多さや情報量の多さから、一つの会社に長く勤め続けることを当然とは考えていない傾向があるとも語られていました。これは裏を返せば、キャリアアップやスキルアップを後押しする風土や体制があるかどうかが、Z世代にとって重要な判断材料になるということでもあります。
「カルチャー」だけでは伝わりにくい理由
別の採用支援会社の代表への取材では、これまで採用で重視されてきた「カルチャー」という言葉は、雰囲気や社風といった比較的表層的な情報にとどまりやすいという指摘がありました。それに対して、個人やチーム単位の価値観・行動様式まで踏み込んだ情報が重要になっているという考え方が語られています。
この取材では、今の学生がプロフィールに性格診断の結果を載せるなど、自分の価値観やタイプを当たり前に言語化する世代だという話もありました。だとすれば、企業側も自社の価値観や行動様式を、同じように具体的に言語化して発信する必要があるといえます。「言っていることとやっていることの間にあるもの」をどれだけ言葉にできるかが、Z世代採用における発信の質を左右するという考え方です。
Z世代に響く採用ペルソナのつくり方
取材の中では、Z世代の価値観をどれだけ理解できているかよりも先に、「自分たちが欲しい人材像をどこまで言語化できているか」が土台になるという話がありました。目安としては、その会社を知らない第三者に「うちが欲しいのはこういう人」と伝えて、イメージが伝わるレベルまで具体化できているかどうかです。
別の取材では、「優秀な人材が欲しい」という言葉で止まってしまい、あれもできてこれもできるという抽象的な人物像を掲げてしまうケースが多いという指摘もありました。人柄の良さや成長意欲といった言葉も、どんな場面でどう発揮されたかという具体的なエピソードまで掘り下げないと、採用の現場では判断材料になりにくいといいます。社内にロールモデルとなる社員がいる場合は、その人にヒアリングして仮説を立てるやり方も一つの手法として挙げられています。
また、会社にずっといることを前提にしないZ世代に対しては、成長を後押しする姿勢を見せることが重要という指摘もありました。取材では、退職した社員にインタビューし、その内容を自社の採用コンテンツとして発信している企業の例が紹介されており、「この会社でどんなスキルが得られ、次にどうステップアップできるか」を明確にする狙いがあるといいます。退職後も関係を絶たず、長い目で人と付き合う視点が必要だという考え方です。
地方・中小企業がZ世代採用で苦労する背景
地方の採用に詳しい担当者への取材では、コロナ禍を経てオンライン面接が一般化したことで、地方在住のまま都市部の企業に応募・転職しやすくなり、地方企業にとって採用がより厳しくなったという実感が語られていました。かつては一次面接のために都市部へ足を運ぶ必要があったことが、地方の求職者にとって一定のハードルになっていましたが、そのハードルがなくなったことで、県外への流出がしやすくなったという見立てです。
地方企業ができる接点づくりの工夫
厳しい状況は変わらないとしつつも、取材では次のような工夫によって少しずつ成果を出している企業もあると語られていました。
- 地域の特色や魅力をSNSなどで発信し、求人以外の関心から会社を知ってもらう動線をつくる
- 採用ホームページやコーポレートサイトを最新の情報に更新し続ける
地域そのものへの興味から会社を知ってもらう
求人広告や人材紹介といった従来の経路だけでなく、SNSなどを通じて地域そのものに興味を持った人が、その地域にある会社の存在を知り、自社サイトへ直接応募してくるケースが増えているという話がありました。求人以外の側面から接点をつくることが、地方企業にとって一つの選択肢になり得ます。
採用ホームページの「玄関」を整える
都市部の企業と採用ホームページを比較したときに、更新されていない、動きがないといった印象を持たれると、そこで離脱されてしまうという指摘もありました。特に都市部で働いていた人が地元に戻った場合、それまで当たり前に見ていた企業サイトとの違いがギャップとして感じられやすいため、そのギャップを減らす発信が求められます。取材では「玄関の掃除をきれいにしておく」という表現で、情報を最新に保つことの重要性が語られています。選択肢が複数ある中で、整った情報を発信している企業から選ばれやすくなるという考え方です。
発信のポイント:ありのままの日常とエピソードで伝える
発信の方法としては、次のような点が取材の中で語られていました。
- 経営者やトップ社員だけでなく、さまざまな立場の社員を発信に登場させる
- 「人がいい」「成長できる」といった言葉を、具体的なエピソードや行動に置き換えて伝える
- 特別な一日ではなく、ありのままの日常や社員同士の関係性が伝わる形式で発信する
さまざまな立場の社員を発信に登場させる
経営者やトップセールスなど目立つ人だけが会社の魅力を語る状態になっていないか、という視点は参考になります。目立つ人の話だけでは「自分とは違う」と受け取られやすく、立場の異なる社員が登場することで、求職者が自分に重ねやすい情報になるという指摘がありました。
抽象的な言葉を具体的なエピソードに置き換える
ある採用支援会社の代表への取材では、「人がいい」「成長できる」という言葉だけでは求職者に伝わりにくく、そのエピソードを具体的に挙げてもらう聞き方をすることで、行動として言語化しやすくなるという方法が紹介されていました。
ありのままの日常・関係性が伝わる発信
特別なハイライトではなく普段どおりの一日に密着した発信の方が、かえって反響を得たという例が取材で語られていました。また、社員同士の対談形式のコンテンツで、呼び方や言葉遣いといった普段のやり取りをそのまま見せることで、社内の関係性が伝わりやすくなるという工夫も紹介されています。誰が見ても同じように判断できる動画などの客観性の高いコンテンツは、情報の信頼性が問われる時代の情報収集の仕方に合っているという見方もありました。
なお、ある採用支援会社が学生向けに行った独自調査では、SNSで企業を検索したことがある学生が6割を超えたという結果が出ているといいます。求人サイトや会社説明会だけでなく、SNS上での発信内容そのものが、応募検討の材料として見られていることがうかがえます。
Z世代採用がうまくいく企業とそうでない企業の違い
取材では、採用がうまくいっている企業とそうでない企業の大きな違いとして、経営者が採用にきちんと向き合っているかどうかが挙げられていました。人材を資源として捉え、人がやるべき業務とそうでない業務を明確にし、必要な能力を採用戦略に落とし込めている企業は、規模が小さくてもよい組織をつくれているといいます。一方で、現場の人手不足への対応として採用担当者が作業的に募集をかけているだけの状態では、応募が集まりにくい状況が続きやすいとも語られていました。
Z世代の採用を進めるうえで大切なのは、「仕事探しの在り方」「働き方に関する価値観」「候補者への訴求ポイント」の3つを掛け合わせて考えることだという指摘がありました。どれか一つだけに取り組んでも、うまくいきにくいという考え方です。
SNS発信については、内製で取り組む企業もあれば、プロの伴走を受けながら自社で撮影する企業、発信業務を外部に委ねる企業など、進め方はさまざまです。どの方法が正しいというよりも、自社の価値観や社風をどれだけ具体的に言語化し、継続して発信できるかが重要だといえます。
まとめ
- Z世代は条件面よりも「誰と・どう働くか」「どんな成長ができるか」を重視する傾向があり、カルチャーへのフィット感やワークライフバランスへの感度も高いといわれています
- 地方・中小企業は、オンライン面接の普及によって採用競争が厳しくなっている一方、地域の魅力を絡めた発信や採用サイトの整備といった地道な工夫で接点を広げている例があります
- 抽象的な言葉だけでなく、社員の具体的なエピソードやありのままの日常・関係性を発信し、客観性の高い情報を用意することが、Z世代の情報収集の仕方に合った採用広報につながります
Z世代採用の進め方に迷っている場合は、自社の状況に合わせた接点づくりの方法を一緒に整理することもできます。まずはお気軽に無料相談からご相談ください。
