「フォロワーが増えない」「再生回数が伸びない」——採用SNSを始めた企業から、こうした相談をよく聞きます。しかし数字を追いかける前に確認したいことがあります。そもそも採用SNSは、フォロワー数や再生回数で成果を測る施策なのでしょうか。現場からは、むしろ「数字は伸びたのに採用にはつながらなかった」という声が数多く上がっています。本記事では、企業の採用アカウントが構造的に伸びにくい理由と、代わりに何を指標にすべきかを整理します。
再生回数が伸びても採用ゼロ、は珍しくない
「企画を考えて1000回、2000回と再生された動画があるのに、一人も採用につながらない」——採用SNS支援の現場では、これは「あるある」としてよく語られる相談です。競合他社より再生は回っているのに効果が出ない。決して珍しい話ではありません。
規模が大きくなっても同じです。仮に100万回再生されたとしても、ターゲットとずれていたり訴求内容が間違っていたりすれば採用には結びつきません。再生回数と採用成果は、そもそも別の指標なのです。
企業の採用アカウントは構造的に伸びにくい
多くの採用担当者が「SNSを伸ばさなければ」と考えます。しかし企業の採用アカウントには、そもそも構造的に伸びにくい事情があります。
人が普段SNSで見ているのは、友人の投稿、好きなタレント、面白い動画、役立つ情報です。企業の採用情報を見るためにSNSを開く人はほとんどいません。つまり、採用情報に日常的に興味を持っている層は、SNS上にほぼ存在しない。だからおすすめにも表示されにくく、フォロワーも増えにくいわけです。これは担当者の努力不足ではなく、仕様に近いものです。
では「バズればいい」のかというと、そうとも限りません。バズで集まるのは採用に興味がない人がほとんどで、成果にはつながりにくい。SNS運用の経験が豊富な人でも、企業アカウントでフォロワーを増やすのはよほどのことがない限り難しい——現場ではそんな声も聞きます。
ただし、採用SNSが無意味なわけではありません。目的が「伸ばすこと」ではない、というだけです。
求職者がSNSを見るのは「確かめにくるとき」
では求職者はいつSNSを見るのか。SNS採用の最前線でよく指摘されるのが、企業名で直接検索して見に来るパターンです。説明会に参加した学生が帰宅後にInstagramで社名を検索する。応募を迷っている人が最終判断の前にXを確認する。そうした行動が実際に起きています。
このとき知りたいのは、オフィスの雰囲気はどんな感じか、先輩社員はどんな人たちか——求人サイトや採用ページだけではわからない情報です。求職者は「この企業、面白そうだな」と思って見に来るのではなく、「この企業、本当に大丈夫かな」と確かめに来ています。
若い世代ほどこの傾向は強くなります。特に20代は、応募前に企業のSNSや口コミを見て「大丈夫そうか」「自分に合いそうか」を判断してから動く。求人票の条件だけでなく、働くイメージを持ったうえで応募を決めているということです。
採用SNSは、あれば加点という位置づけから、なければ不安を持たれる存在へと近づいています。
採用SNSのKPIは「検索されたときに何が伝わるか」
そう考えると、追うべき指標は自然と決まります。自社名で検索されたときに、どれだけ安心感と魅力を伝えられているか。これが本来の指標です。
具体的には、次のような状態になっているかを確認します。
- 投稿が定期的に更新されているか
- 社員の顔や雰囲気が見えるか
- オフィスの様子がわかるか
- 会社の価値観や文化が伝わるか
これらが揃っていれば、求職者は「自分に合いそう」「働くイメージが湧く」と感じてくれます。逆に更新が止まっていたり、公式情報ばかりで社員の顔が見えなかったりすると、「この会社は大丈夫だろうか」と不安を持たれてしまいます。
だからこそ、無理にフォロワー1000人を目指す必要はありません。100人くらいのつもりで気負わずに始めて、続けることと中身の質を保つ。そのほうが本質的です。
採用SNSの支援会社が行った調査では、優先度が高いのは職場環境やオフィスの紹介、社員紹介、採用イベントの告知、福利厚生・制度、企業理念や文化。なかでも社員紹介は、入社1年目から3年目くらいの若手を選ぶと、求職者が数年後の自分を重ねやすくなります。
応募数だけで費用対効果を測ると見誤る
もう1つ、指標の置き方でよくある行き違いがあります。「それで何人採用できるのか」という費用対効果の問いです。
もっともな質問に聞こえますが、少し引っかかるところがあります。採用ホームページに、そこまで厳密な費用対効果を求める企業は多くないはずです。数字は確認しても「悪いからやめよう」とはならず、どう改善するかを前提に考えられている。ところがSNSとなると、途端に「それで何人取れるのか」が先に来ます。
そもそも採用ホームページに直接たどり着く人は多くありません。求人媒体、広告、スカウト、人材紹介、SNSで見かけて検索する——こうした接点を経て、「気になるな」と思った人が初めて訪れます。つまり採用ホームページは応募の獲得装置というより、意思決定を後押しする装置であり、採用SNSもいまや同じ役割を持ち始めています。
実際、SNSの影響はファネル全体に及ぶとされます。スカウトの返信率や受諾率、面接の参加率、内定の承諾率——発信があるかどうかでこれらが変わってくるというのです。候補者がYouTubeを3本見てInstagramを見てから応募した場合、数値上は最後の接点だけが評価されがちですが、実際は複数の接点を回遊した末の意思決定です。1つのクリエイティブから何人応募が来たかという測り方が難しい理由がここにあります。
採用とは、数値化しづらい信頼形成の積み重ねです。面接官の印象やオフィスの雰囲気に費用対効果を問わないのと同じこと。ただしこれは「効果を測らなくてよい」という意味ではなく、応募数という単一の物差しだけで是非を決めると本質を見失う、ということです。
数字を追う前に決めておくこと
では代わりに何をすればよいか。先に決めるべきは、誰に何を届けるチャンネルなのかです。ここが決まらないと、何を撮ればよいかわからずネタ切れになったり、来てほしくない層から問い合わせが来たりします。ターゲットをペルソナまで具体化し、その人が抱えている悩みを言語化しておくと、そのまま企画の種になります。
気をつけたいのは、最初から作り込みすぎないことです。動画はプロに頼まなければと思われがちですが、スマートフォンで撮ったもので十分。むしろ手作り感があるほうが、リアルさが伝わって効果的なこともあります。編集も最低限でかまいません。BGMや字幕、エフェクトを凝るより、社員の生の声がそのまま聞こえるほうが信頼されます。
ただし、ここまで設計しても運用が続かないのが現実です。採用SNSの支援会社が採用担当者に運用の悩みを聞いたところ、最も多かったのは「リソースが足りず更新を続けられない」でした。設計と同じくらい、続けられる体制を先に決めておくことが重要です。内製で回すのか、撮影だけ自社で行って編集を外に出すのか、制作から任せるのか——体制と予算に合う形を選ぶことが前提になります。
まとめ
採用SNSで追うべき指標を整理しました。
- 企業の採用アカウントは構造的に伸びにくく、バズで集まるのは採用に興味がない層が中心。フォロワー数や再生回数は成果と直結しない
- 求職者は「面白そう」ではなく「本当に大丈夫か」を確かめに検索してくる。KPIは、検索されたときに安心感と魅力が伝わる状態になっているか
- 応募数だけで費用対効果を測ると本質を見失う。SNSはスカウト返信率から内定承諾率まで、採用ファネル全体に効いてくる
自社のSNSが「検索されたときに何を伝えているか」の点検から、一緒に整理することもできます。まずはお気軽に無料相談からご相談ください。
