「集客用に育てたSNSアカウントがあるなら、採用にもそのまま使えないか」——中小企業の経営者や採用担当から、よくこうした相談を受けます。フォロワーもエンゲージメントも育っている土台を採用に転用できれば、新規にアカウントを立ち上げる手間もコストも省けます。ただし、集客と採用ではアカウントを見る相手も知りたい情報もまったく異なるため、ひとつのアカウントで両方の役割を担わせようとすると、発信の狙いがぼやけ、結果的に集客・採用のどちらも伸び悩みやすくなります。この記事では、SNSを集客と採用で兼用してよいのか、分けるとしたら何を基準に線引きすればよいのかを整理します。
なぜ集客用アカウントを採用にも使いたくなるのか
すでに一定のフォロワーやエンゲージメントを持つアカウントがあると、「この資産を使わない手はない」と考えるのは自然な発想です。新規にアカウントを立ち上げて一からフォロワーを集めるのは時間がかかりますし、担当者を増やす余裕がない中小企業ほど、ひとつのアカウントで何役もこなしてほしいという期待が強くなります。ただし、この「資産を使い回したい」という発想と、「実際にその資産が採用にも効く」という話は別です。集客アカウントのフォロワーの多くは顧客や見込み客であり、求職者としてそのアカウントを見ているわけではありません。
集客と採用ではSNSに求められる役割がそもそも違う
SNSの発信戦略を考えるうえで欠かせないのが、ターゲットが実際にどこで情報を探しているかに媒体選びを合わせるという考え方です。集客の場合、ターゲットは自社の商品やサービスに関心を持つ顧客・見込み客であり、比較検討の材料として発信内容を見ます。一方、採用の場合のターゲットは求職者であり、知りたいのは「この会社で働くとどうなるか」という実態です。見ている人も知りたいことも別である以上、同じ発信で両方に等しく刺さると考えるのは無理があります。媒体を分けるかどうか以前に、まず「誰に何を届けたい発信なのか」を切り分けて考える必要があります。
コンテンツの「見せ方」を一本化すると両方がぼやける
集客向けの発信は、会社概要や実績、提供している品質の伝わる写真や動画など、信頼を積み重ねることが目的です。再生数やバズを狙うものではなく、見た人に「この会社は安心して任せられそうだ」と思ってもらうための内容が中心になります。一方、採用向けの発信で見せるべきは、実際に働く人の様子や社内の雰囲気、入社後の実態といった、求職者が入社を判断する材料です。この二つを同じ投稿・同じトーンで扱おうとすると、見る側は「これは誰に向けた発信なのか」を掴みにくくなります。発信の軸を一本化しないまま両方を追いかけると、結局どちらの相手にも深く刺さらない投稿になりがちです。
「事前に情報を届けておく」という仕組みは集客にも採用にも使える
営業の現場では、訪問営業の前に会社の動画や発信をあらかじめ見てもらっておくというやり方がよく使われます。事前に情報に触れてもらうことで、初対面の商談であっても相手に親近感を持って迎えてもらいやすくなるという効果です。この仕組み自体は採用にも応用できます。面接の前に会社のSNSや発信を見てもらっておけば、初対面のハードルが下がり、入社後の温度差も小さくしやすくなります。ただし、事前に見せる中身は集客用と採用用でまったく別のものを用意する必要があり、この仕組みを使い回せることと中身を使い回せることは分けて考えるべきです。
運用に使える時間は有限だという前提を忘れない
経営者も採用担当も、営業や見積もり作成、面談対応など本業を抱えながらSNSを運用しています。発信にかけられる時間や体力には限りがあり、だからこそ最初に戦略を絞り込んでおく必要があります。集客と採用を同じアカウント・同じ担当者に兼務させようとすると、求められる役割は単純に増えるのに、割ける時間はそのままです。手が回る量を超えて役割を足していくと、結局どちらの更新も滞り、集客にも採用にも使えない中途半端なアカウントになりやすい傾向があります。
集客と採用、SNSをどう線引きするか
実際の線引きの仕方には、主に次の3つの選択肢があります。
- アカウントを完全に分ける
- アカウントはひとつのまま、投稿の目的とカテゴリを明確に分ける
- 集客アカウントで積み上げた信頼を、採用の後押しとして間接的に使う
アカウントを完全に分ける
最もシンプルな線引きです。集客用・採用用それぞれに専用アカウントを持てば、発信内容もトーンもターゲットに合わせて最適化できます。フォロワーにとっても「何を見に来たアカウントか」が明確になるため、集客・採用いずれのメッセージも伝わりやすくなります。一方で、アカウントを新たに育てる手間や、運用担当を増やす体制づくりが必要になる点は考慮が必要です。
アカウントはひとつのまま、投稿の目的とカテゴリを明確に分ける
リソースの都合でアカウントを分けられない場合は、同じアカウントの中で投稿の目的をはっきり区別する方法があります。ハイライトやカテゴリ分けの機能を使い、採用向けの投稿とお客様向けの投稿を見る側が判別できるようにしておけば、完全に分けるほどではなくても混同は避けられます。ただし、フォロワーの母集団が顧客中心に偏っている場合、採用向けの投稿がそもそも求職者に届きにくいという制約は残ります。
集客アカウントで積み上げた信頼を採用の後押しに使う
集客用のSNSで会社の信頼を積み上げ、そこから生まれた営業の成果を採用への投資に回し、人を増やしてさらに事業を伸ばす、という順序で成長している企業も見られます。これは集客アカウントを採用用に兼用しているのではなく、集客の成果を別の形、例えば採用予算や採用専用の発信に振り向けているという点で、ここまで述べてきた「兼用」とは区別して考えるべき話です。
まとめ
- 集客と採用ではSNSを見る相手も知りたい情報も違うため、同じ発信で両方に刺さるとは考えにくいこと
- 発信の軸を一本化しないまま両方を追うと、結局どちらの相手にも深く刺さらない投稿になりやすいこと
- アカウントを分けるにせよ、目的別に区分けするにせよ、限られた運用リソースの中でまず「誰に何を届けるか」を先に決めておくことが線引きの出発点になること
SNSを集客と採用のどちらに使うべきか迷ったら、まずは自社の運用体制と目的を棚卸しすることから始めてみてください。まずはお気軽に無料相談からご相談ください。
